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「はっ……?」
渇いた音が彼の耳を刺激した瞬間、目の前が真っ白になって思考回路が鈍くなった。
なんで左頬が痛いんだ?
そう思ったときはすでに全身に海水を被っていた。
そこで彼はやっと理解した。
オレ、ビンタされたのか、と。
「アンタ練習の邪魔なのよっ! ここがどこかわかってんの!?」
紅葉は海水に浸っている佑樹に向かって叫ぶと、胸ぐらをグッと掴んだ。
「知ら……ねぇよ……」
佑樹は混乱しながらも紅葉を突き飛ばし、浜に座った。
紅葉は目をギッとつり上げると再び佑樹の胸ぐらを掴み乱暴に浜の外のデコボコ道に彼を叩きつけた。
その衝撃で脳の回線が回復した佑樹は、仕返しと言わんばかりに紅葉の胸ぐらを掴んだ。
「イッテェなぁ! 知るかよっ! 何回言わせば良いんだ! オレはここに来たばっかだって言ってんだろっ!」
紅葉はそんな佑樹の手を力一杯振りほどいた。そしてありったけの怒りをぶつける佑樹に怯むことなく看板を指差した。
「だったら教えてあげるわよっ! ここは……ここは陸上部の練習場よっ! そこに書いてあるでしょ!? アンタの身勝手な行動のせいで大幅なタイムロスよ! どうしてくれるのよ! それにこれじゃあまた……」
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