第一章 『卒業』

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 ――2005年3月1日 現在。 「我が母校、矢作西中学校にも春が訪れ今、巣立ちの時を迎えました」  卒業、巣立ち、別れ、出会い……。  そんなうざったいことばかりの季節がまたやって来た。オレの大っ嫌いな春が……。 「私たちはこれから義務ではなく、自分達の意思で勉学、仕事に励み……」  卒業生、別れの言葉……。  舞台の上から見える同級生の顔は涙でグシャグシャ。でもこれを読んでる本人のオレの顔にはそんなもの一滴たりともついていない。 「歩む道は違えど、心の奥でみんなと繋がっていると信じ、一歩前に踏み出そうと思います」  心の奥で繋がっている……。あり得ないな。友情とか愛情とかそんな形無いものは存在しない……。 「皆さん、この学舎【マナビヤ】で過ごした日々をどうか忘れず、またいつか笑顔で再会しましょう。平成十六年 三月一日、卒業生代表『氷室 佑樹 ヒムロ ユウキ』」
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