第四章 白浜臨海高校

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「別になんにも」 「別にって、アンタねぇ、私が負けるとか思わないわけ!?」  佑樹は怒鳴りながら掴む紅葉の手が震えているのに気づいた。  小さくため息をついたあと佑樹は紅葉の手を握った。 「震えてんの? らしくねぇじゃん」 「……当たり前でしょ? 私が負けたらアンタまで罰を受けるのよ? 今からでも遅くないわ、キャプテンに謝って佑樹君だけでも……」 「なんだよそれ、いつもの威勢はどこに行ったんだよ? 別に勝てば問題ないだろ? オレはお前を信じてる。あっ、そうだこれ女将さんから」  佑樹は持ってきたお弁当を紅葉に渡した。 「えっ? あ、ありがと……」 「どういたしまして。それ食って勝ってくれよ? オレのために」 「い、言われなくても勝つわよ! アンタのためじゃなくてアタシのためにね! 見てなさい! 私の実力アンタに教えて上げるんだから!」  そう言うと紅葉はお弁当片手に、キャプテン達の残した足をたどってズンズン進んでいった。  佑樹はそんな紅葉の姿を見てニコッと笑った。  やっぱ早乙女は、ムカつくぐらいが丁度いい。  春野が言ってた言葉の意味がやっとわかった。アイツ、先輩達に目の敵にされてるんだ……。 「おい待てよ早乙女!」
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