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「くっ……やっぱアンタムカつくわ。それより佑樹君、ここにいるってことは暇なのよねぇ?」
突然足を止めてニヤッと笑う紅葉に寒気がしたが佑樹は首を縦に振った。
「ま、まぁな。学校の見学するために女将さんに暇もらったし」
それを聞いた紅葉はさらに不気味な笑みを浮かべた。そして佑樹の手をギュッと握り返した。
「そっか見学かぁ~~。じゃあ、見学ついでに陸上部の練習に参加してみない?」
「はあっ、なんでオレが!? イヤだね! だれがやるかっ」
校門に着いた佑樹は紅葉の手を振りほどいて一人でズンズン前に進んだ。
早乙女には悪いけどオレ、汗かくの嫌いなんだよね。どうせアップの相手しろとかなんとか言うんだろうし。
「……そっか、やっぱりダメだよね。仕方ないな……一人でアップしよ……」
背中から聞こえる寂しげな声に佑樹は不覚にもピタッと足を止めてしまった。
ダメだっ! 声をかけちゃダメだ! かけたら絶対今日一日不幸になる!
「…………春野は? 春野はどうしたんだよ」
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