第一章 『卒業』

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 盛大な拍手に見送られ、佑樹はゆっくりと舞台を降りた。  中学最後の日、最後の制服に袖を通したときも三年間通い続けた通学路を歩いたときも生徒代表で別れの言葉を言ったときもオレは……なにも感じることが出来なかった……。  式終了後、学校のロータリーでは別れを惜しむように卒業生達がカメラのシャッターを押していた。  当然オレも撮った。沢山友達もいるし。でも……親友と呼べる友達はいない。上辺だけの付き合いってやつかな? 他人に干渉して良いことなんて一つもないし。 「氷室先輩――――!」  一通り写真を撮り終え、近くの階段に腰掛けていると後輩の女の子に話しかけられた。 「氷室先輩っ! 卒業おめでとうございます!」 「うん、ありがとう」 「あのっ先輩! ずっと憧れでした! もしよかったら先輩の制服のボタン貰えませんか?」 「オレの? いいよ。はいどーぞ」  佑樹はニコッと笑いながら制服の第二ボタンを外し、女の子の手のひらにそっと置いた。
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