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「なっ……ムカつく……でも今日は我慢してあげる。私のせいで佑樹君まで巻き込んじゃったし」
背中から聞こえた弱気な声に佑樹はため息をつきながら振り返った。
「オイオイ、まだ言ってんのか? 悪いのはオレだろ? 看板を見ずに浜を荒らしたんだから。だから早乙女は気にすんな。そんな小さいこと気にしてたら勝てるものも勝てなくなるぞ?」
「う、うん……わかった」
今佑樹の目の前にいる紅葉はいつもの彼女と違った。
両手を胸に重ね、不安そうにうつ向く紅葉の姿は、か弱い少女を思わせた。
そんな紅葉の姿に佑樹の胸の鼓動はさらに高まっていく……。
気づいたときには紅葉の正面に立ち、彼女のさらさらな髪の上に手を添えていた。
「なに震えてんの? 大丈夫だよ、絶対勝てるから」
「……他人事だからそんなこと言えるのよ……。それに佑樹君、私の走りみたことないでしょ?」
「オイオイ、他人事じゃねぇだろ? それにお前の走りなら朝見させて貰ったよ。あの雑巾がけでな」
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