第四章 白浜臨海高校

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「はあっ!? 雑巾がけって……まさかそれ見ただけで私が勝つと思ったの?」 「ん? そうだけど? オレを負かすなんて大したもんだ」  目と鼻の先で頭を撫でながらうんうん唸る佑樹を見て紅葉はプッと吹いた。 「アハハッ! 佑樹君って本物のバカァ? 佑樹なんかうちの部の人なら誰でも勝てるっての!」 「なにぃ!? ……てね、んなの知ってるよ」 「えっ? じゃ、じゃあなんで私なんかに賭けたのよ! ってか、気安く頭撫でるなぁ!」  バシッと佑樹の手を払い除け、紅葉は後退した。  佑樹はクスッと笑うとそんな紅葉の顔を覗き込んだ。 「単純にお前に賭けてみたくなったからだけど?」 「え……それどういう意味?」  ポッと火が灯ったように頬を赤らめた紅葉から佑樹は恥ずかしそうに顔を反らした。 「ああもうっ! 理由なんかどうでもいいだろ! それより早く行くぞ! アップするんだろ?」 「へ? あ、うん」  紅葉はコクッと小さく頷きながらトトトっと佑樹の隣に移動した。  そんな愛くるしい彼女の姿を見た佑樹は、  ぐっ……悔しいけどカワイイ……。  と佑樹は心の中で密かに呟き前に進んだ。
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