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「でっけぇ――……」
佑樹は目の前に広がる広大なグランドを見て声を漏らした。
オレの居た中学校のゆうに三倍はある……。恐るべし、田舎の高校。
そんなキョロキョロする佑樹の頭を紅葉はピシッとチョップした。
「もうっ! キョロキョロしないでよ! 恥ずかしいでしょ? ていうかなにがそんなに珍しいの?」
「なにって、このグランドだよ! メチャクチャデカイじゃん!」
「そう? でもこれぐらい普通なんじゃないの? 佑樹君の学校が小さかっただけよ」
そんなことを話していると、突然後ろから聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。
「おーい! 紅葉ぁ! 氷室ぉ!」
佑樹と紅葉が同時に振り返った先に居たのは、走りの邪魔にならないように髪を束ねた春野里佳その人だった。
紅葉は慌ててそんな里佳に近寄ると、声を極力小さくして彼女の耳元で怒鳴った。
「り、里佳!? ダ、ダメッ! 話しかけないでっていつも言ってるでしょ!?」
「も~~、別に私はイジメられてもいいって言ってるでしょ? 紅葉を無視するほうが耐えられないよ」
「で、でもぉ……」
「でもじゃない! 私は紅葉の親友よ。紅葉の痛みは私の痛みなの。だからもっと私を頼って」
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