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そう。
あれは、昨日プレゼントを買った帰り。
地下鉄で帰宅途中だった僕の携帯が震えた。
見ると、彼女からの着信。
だが、電車の中で電話に出るほどマナーのない人間ではない。
留守電に切り替わったのを確認し、携帯をそっと耳に当てた。
透き通った声で、約束取り消しのメッセージが吹き込まれていた。
大晦日の夜に急きょ両親が来ることになり、僕と会うことが出来なくなったというのだ。
プレゼントの袋が、床に落ちた。
困惑した。
落胆した。
そして――腹が立った。
プレゼントを置きっ放しにして家に帰り、何も考えられなくなった僕は、こたつに入ってふて寝した。
たった今取り戻した記憶が、僕の目の前を真っ暗にする。
「もしかして、忘れていたの?」
アーモンドのように丸い眼が、僕を覗き込んだ。
それから、みるみるうちに彼女の表情が急変した。
「え、もしかしてご両親は…」
「いるわよ。そこの部屋に。さすがに寝てるけどね」
僕は、鼻を掻いた。
彼女は、目を細めた。
「わかってるわね?」
「…はい」
舐められては困る。
彼女が言おうとしてることなど、わかりたくないけどわかってしまう。
留守電の返事がなかったこと、夜中に外で叫んだこと、ドアのブザーを何度も鳴らしたこと、リビングを雪まみれにしたこと、格好がボロボロだということ。
他にも何かありそうだが、とりあえずそんなとこだ。
僕は、身構えた。
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