トイレの床

3/7
前へ
/22ページ
次へ
「買い物行かない?靴と服が見たいんだ」 私はうなずき、彼に従う。 買い物中の彼は、目をキラキラさせているから。それを見ているの、結構好き。 「今日は、俺の車で行こう」 そう言ってジャケットから、ブランド物の黒いキーケースを取り出す。 そして、私が好きな笑顔を見せる。 「うん!」 あぁ。もう、最高! この笑顔を、ずっと見ていたい。 黒いセダンの助手席に乗り込み…彼の好きな、流行りの曲を聞く。 買い物中、私はずっと笑っていた。そうしたら、彼も笑ってくれるから。 1時間ほどかけて買い物を済ませ、少し店内をフラフラしてから帰ることにした。 来たときと同じように、助手席に座る私に 「家、寄ってく?」 彼からの思いがけない提案。 実は、彼の家には行った事がない。 私の方が仕事が終わるのが遅いから、私の帰宅に合わせて彼が私の家に来る。 わざわざ着替えて、出直すのも何だろ?…なんて。細やかな気遣いをしてくれているんだよ? すごく嬉しいじゃない。 でも『私の家』っていうのが当たり前になっちゃったから、なかなか『行ってもいい?』って言えなかった。 「行く!」 私は張り切って答えた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加