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いつまでも突っ立っている訳にもいかないので、飛希は意を決し、男に声をかけた。
「あの……」
すると男は振り返りもせずに、窓を向いたまま抑揚の無い声で言った。
「ああ、よく来たね。……そのソファーに座りなさい。立っていたいのならそれでも構わないが」
飛希は、「……立っています」とだけ言うと、その後に続く言葉を探して戸惑い、結局黙りこんでしまった。
男は飛希が黙り込んだ理由を勝手に解釈したのか、夜景を見下ろしながら言った。
「…戸惑う気持ちは分かります。ではせめて早く楽にしてあげましょう」
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