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しかしそうなれば、飛希が彼と会うことは、もう二度と叶わなくなる。
だから飛希はそうなる前に、彼に会おうと思った。未練を残さないよう、きちんと別れを告げるために。
そして2日後の夕方、少し早めに家を出て、飛希は彼の家に向かった。
幸い、彼とのデートで一般の交通機関の使い方を教えてもらっていたため、車なしでも彼の家まで無事辿り着くことが出来た。
ちなみに彼の家は超がつくほどのボロアパートで、6畳一間にお風呂・トイレが共同という、飛希には到底縁の無い世界だった。
飛希は、溢れそうになる涙を堪えながら一歩一歩ゆっくりと廊下を進み、彼の家のドアの前で立ち止まると、軽くドアをノックした。ところが、ドアの向こうからは、返事はおろか物音ひとつしなかった。
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