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…──ホテル・ラグーンのフロントで「新堂という者ですが」と飛希が名乗ると、フロント係の男は淡々とした口調で、「承っております。最上階、インペリアル=スイートでございますね。直ぐにご案内致します」と言い、一人のボーイを飛希の案内役として付けた。
「エレベーターはこちらでございます。お足元、お気を付けくださいませ」
ボーイはにこやかに笑いながらそう言うと、飛希を最上階まで案内した。最上階にはインペリアル=スイート一室しかなく、エレベーターを降りるとすぐ前方に、品のいいデザインの扉があった。
「ありがとう。ここまでで結構です」
飛希はゆっくりとエレベーターを降りると、ついて来ようとするボーイを制止し、礼を言ってチップを渡した。そしてエレベーターのドアが静かに閉まったのを確認すると、顎を心持ちクイッと上げ、覚悟を決めた。
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