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もう一人は冥邪翼(つばさ)。青みがたかったくせのない髪は短く、前髪は眉にかかる長さ。眼鏡の奥の瞳は、つりあがり気味澄んだ藍と黒のまざった色をしている。
ふたり共身に纏っているのは、布と同色の糸で美しい刺繍の、ほどこされた見慣れない形の着物に袴、その上に袖のない羽織りを羽織っている。
「翼、千里から電話があった。太陽が昇らない原因は、…」
「祠の封印が弱まり禍き者達が、解き放たれたのが原因……でしょう?」
折り畳み式の携帯を胸ポケットに終いながら、千里との電話の内容を伝えると、翼は後を引き取って続けた。
「なに、万里から電話でもあった?」
「ええ、それで慌ててやってきたんです。外はパニックの人々で、ごった返してますよ」
翼は頷き言うと、書斎から外に出て空を見上げた。後に続いて外に出て来た龍神も、翼にならって空を見上げた。
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