壱,

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 少年の足元に光の塊が現れ、光の中から一匹の獅子が現れた。 『茫沁(ぼうしん)、起きろ。大変な事になってるぞ』  小牛とほぼ同じ大きさの、獅子が布団に包まって寝ている、茫沁を小突いた。  獅子は、灰白色の毛並みに長い尻尾が、二本瞳は緋色。背中に刺青が施されている。 「どうした? 戒? まだ、七時じゃん。起こすなよ…」  茫沁は、寝ぼけ眼(まなこ)でベッドサイドにある、時計を手に取り時刻を確かめて、戒を見ながら尋ねた。  短い黒髪に、黒曜石色の瞳。紺の縁取りがされた、淡い水色のパジャマ。 『外を見てみろ。七時だってのに、太陽が昇らず外は真っ暗だ』  戒はベッドのすぐ脇にある、窓の所に行くと、戒は器用に前足を使いカーテンをめくって、茫沁に外を見る様に促した。 「おいおい……。マジ? 嘘だろう……」  茫沁はそう呟き、急いで着替えると戒を伴って、部屋を飛び出した。
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