壱,

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(なんだろう……? 嫌な予感がする)  ベランダから、アスファルトをパニックに陥った人々が行き交うのを見下ろし、暗闇のままの空を見上げて胸中(きょうちゅう)で、呟いた。 「姉さん、母さんが妖の事が心配だから、様子を見てきてって」  ベランダへ通じる窓を開けて、少女と瓜二つの容姿を、している少女が母親の伝言を伝えた。 「りょーかい。さっさと準備して、行きましょ」  ひとつ頷くと、出かける準備をするために、部屋へ戻った。  少女達の名前は千獄千里と千獄万里という。二人は一卵性双生児の双子で、親でさえ間違えるほど二人はそっくりだった。  千里は膝丈まで伸ばした、栗色のストレートヘアに栗色の隻眼、左目に黒い眼帯をしている。  浅葱色の半袖に、花色のロングスカート姿で、右足首にくすんだ蘇芳色の勾玉が一巡した飾りをしている。  万里は腰まで伸ばした栗色のウェービーロングヘアに、栗色の瞳。  若草色のノースリーブワンピース、その上に紅梅色のカーディガンをきていて、両腕に包帯を巻いている。 「母さんの判断は正しいわ、妖の所にいればひとまず安心だもの」  外はパニックに陥った人々で、ごった返している。
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