壱,

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「妖なら今回の原因を、知っているだろうしね」  エレベーターホールで、エレベーターを待ちながら下を見下ろして、お互いに息をついた。  10階に到着したエレベーターに乗り込み、1階のボタンを押した。  一瞬の浮遊感を残して、軋みながら降下を始めた。地面が徐々に近くなって来る。  一人暮らしをしている幼馴染みの家は、千獄の家から三駅ほど離れた距離にあり、郊外に所有する敷地内にある平家で、広さは東京ドーム3つ分。  そうこうしている内に、1階につき玄関ホールへ向かった。  その際に、青い顔をして備え付けのテレビを凝視している、おじさんがいる管理人室の横を通り過ぎる際に、ニュースを読み上げるアナウンサーの声が、漏れ聞こえてきた。  アナウンサーの顔色も青白かった。 『いまだ、太陽が昇る兆しはありません。今、世界中の専門家、天文学者の方々が原因究明を急いでいます。国民の皆さんは、危険ですので外出は控えて下さい。繰り返します――…』 「大騒ぎだね。交通マヒ起こしてるだろうし、どうしよっか?」
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