壱,

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am.8:00  いぜん、空は暗闇に包まれている。  そのとき、傍らに一つの気配が生(しょう)じ、一匹の大虎が顕現(けんげん)して瞬く間に女性の姿に変わった。  ちよみは神殿から、出る事を許されていないため、外から半ば隔離(かくり)された状態に、あるため外の様子を弥生に見てきてもらったり、弥生の眼を介して外の様子を、見たりした。 「弥生、様子はどうだった?」 「この異常気象により、どこもパニック状態です。学院は安全性を考え、本日は休校とするそうです。早急に、解決策を講ずるようにと学院長から託(ことづ)かって、きました」  弥生はちよみの血に宿る天虎(てんこ)で、人の姿のときは地につく長くくせのない見事な黒髪に、紫の瞳。十二単を好んで着ている。  天虎というのは、神に通じる妖(あやかし)で白と黒のしま模様に金の瞳を持つ、大虎の姿をしている。 「分かった。禊(みそぎ)を行うから、準備をお願い」 「承りました」  ちよみはひとつ頷くと、立ち上がり裏にある滝へ向かった。  弥生は立ち去るちよみの背に一礼して、姿を消した。
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