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しかし、未確認物体だな……あれ。もしや、宇宙人か?
あれは宇宙人の頭についている触角なのか?
俺はさらわれ、改造されて宇宙の果てに売り飛ばされて、見世物小屋で一生を過ごすのか?
否、それだけは嫌だ。
よし、宇宙平和の為にここはこいつを捕まえて、逆に見世物小屋に売ってやる!
「この宇宙人め!」
「ひにゃ!」
触覚を無造作に掴んで思いっきり引っ張ると、あら不思議。思いのほか軽く勢いよく、俺の胸へとすっぽりと収まっていた。なんとも小さい宇宙人だ。
「なんだ、瑠璃(るり)か」
「はわわ……お、おおお、おにいちゃ……」
俺の胸にすっぽりと収まっているのは、瑠璃だった。俺を見上げる顔一面、真っ赤だ。
両手を胸の前で所在無さげに動かして恥らうポーズは最高である。こういう恥じらいが女の子なんだよ。
じゃなくて、俺が掴んだのは瑠璃の髪の毛だったのか。
どうやら、ツインテールに結ばれた髪の毛だけが見えていたわけだ。いや、気付いていたよ?
さすがに長年一緒に暮らしいる家族ぐらい、すぐに分かるぞ。
「何か用か? 瑠璃」
「えっと……あの、その、あの……」
俺を見ている瞳は潤んで、妙に色っぽい。
さすがは天然系。
男心をくすぐる技をすでに体得しているとは恐れ入った。
恥ずかしそうにチラチラと見るその仕草は普通の男ならイチコロだ。いや、イチコロって古いか?
こいつは異様に恥ずかしがり屋で、人前で話をするのは大の苦手という筋金入りの人見知り気質。
そんな性格だから、よくパニくっている。今もパニくっているわけだが……て、まずい!
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