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「おにぃは、まだ手がかかるおこちゃま。だから、ボクがしっかりと更生させてあげるよ」
「いや、更生せんでも俺はまっとうだ」
拳を握りしめて俺に見せるように、首に思いっきり抱きついてくる。
こいつの身長は一五〇ちょっと。俺、一七〇強。見事に首にぶら下がるおもちゃの出来上がりだ。しかし、この状態だと珊瑚のふたこぶラクダが背中にぽよんぽよんっと当たっているのだが……これまた瑠璃に負けず劣らず成長しているもんだ。
「おにぃ……えっち。ボクはおにぃの嗜好は調査済み。机に隠してるもんね」
「ば、ばか! 俺はっ」
小声で俺に耳打ちする珊瑚の声は妙に色っぽくて、心臓がツイストを踊り出していた。
モロにばれてる。
俺の思考と嗜好はすでに把握済みなのかっ! 微妙にダジャレが出来てる。
思考と嗜好……。
そんな事より、机に隠してある俺が友達から譲ってもらった、大人のバイブルまで知ってるなんて! こいつ、いつの間に調べたんだよ。
普通はベットの下が定番だが、ここはあえて机という斬新な場所に隠したと言うのに――ばれてる!
しかし、こいつは俺を「おにぃ」と呼ぶが――これは「おにいちゃん」の略――でも、俺とこいつは同級生だ。お兄ちゃんではないのだが自分だけ仲間外れは嫌だとか言って、勝手にそう呼んでいる。やっぱり、こいつの考えている事は俺には理解出来そうにない。
大体、こいつ等のお兄ちゃんになったのは十年前。
俺が六歳の頃だ。
それまで、俺は一人っ子だった。つまり、こいつ等は血の繋がらない家族。
――義理の妹
だが今はそんな感じは一切なく、すっかり馴染んでしまっている。なんて考えていたら、俺の両脇では未だにさっきの早起きの事を言っているし、後ろからは誰に話しているのか分からない声が延々と聞えていた。
これは、ある意味拷問だ。
さっさと学校に行こう。
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