第三話:愉快な仲間が多い事だ。

3/8
前へ
/268ページ
次へ
「あれは、おにぃの机ですね」 「なにっ」  ごく普通にそう言っている珊瑚の手には、いつの間にか教科書が握られていた。 「ほい……どんぞ」  ポンッと渡してくるので反射的に受け取って見ると、そこには俺が長年掛けて丹精こめて落書きした教科書があった。  俺の最高傑作っ! 「これは、俺の教科書、現国君一号っ」 「そうですね。そして今も四散していくおにぃの教科書……って、一号ってなに?」 「そんな事は今は聞くな。ぬおっ――日本史上等兵がっ」  そうこうしている内に、俺の机からは全ての教科書達が飛び出していた。  誰だ、俺の机を教卓の前にやったのは。  俺の席は窓際の一番うしろで特等席だぞ。それをあんな安眠も出来ない地獄のような場所に追いやるとは!  だが、今はそんな事はいい。よくないけど、そっちはおいとおこう。  見るも無残に教室中に散らばっている教科書達が俺を見て、敵を討ってくれと言っているのだ。  よし、任せておけ。お前達の敵は俺がとるっ! 「逃げないでよ、お兄ちゃんっ! 大人しく捕まりなさいっ」 「うるせえ、逃げなきゃ俺が死ぬだろうがっ!」  未だに騒ぎながら、俺の机の中の物を投げあう二人。今、残っているのはノート達だ。  あいつ等は身体が薄くて弱いんだ。そんな奴等を投げるなんて、許せない。かわいそう過ぎるだろうが!
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加