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「あれは、おにぃの机ですね」
「なにっ」
ごく普通にそう言っている珊瑚の手には、いつの間にか教科書が握られていた。
「ほい……どんぞ」
ポンッと渡してくるので反射的に受け取って見ると、そこには俺が長年掛けて丹精こめて落書きした教科書があった。
俺の最高傑作っ!
「これは、俺の教科書、現国君一号っ」
「そうですね。そして今も四散していくおにぃの教科書……って、一号ってなに?」
「そんな事は今は聞くな。ぬおっ――日本史上等兵がっ」
そうこうしている内に、俺の机からは全ての教科書達が飛び出していた。
誰だ、俺の机を教卓の前にやったのは。
俺の席は窓際の一番うしろで特等席だぞ。それをあんな安眠も出来ない地獄のような場所に追いやるとは!
だが、今はそんな事はいい。よくないけど、そっちはおいとおこう。
見るも無残に教室中に散らばっている教科書達が俺を見て、敵を討ってくれと言っているのだ。
よし、任せておけ。お前達の敵は俺がとるっ!
「逃げないでよ、お兄ちゃんっ! 大人しく捕まりなさいっ」
「うるせえ、逃げなきゃ俺が死ぬだろうがっ!」
未だに騒ぎながら、俺の机の中の物を投げあう二人。今、残っているのはノート達だ。
あいつ等は身体が薄くて弱いんだ。そんな奴等を投げるなんて、許せない。かわいそう過ぎるだろうが!
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