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朝はいつもあの調子である。
もう少し静かに出来ないのかと思ってしまうのだけど、これが水上家の朝だと言ってしまえば、それで通ってしまうのだから仕方ない。
逆に静かだと寂しいと思ってしまう自分の心に、ちょっとした矛盾を感じてしまうわけなのだが……。
「ふああっ……眠い」
「琥珀ちゃん、朝早く起き過ぎなんだよ」
「朝五時から起きて何をしてるのか、この若年寄」
俺を囲む三人の会話。
仲の良い姉妹の会話だが、俺を囲んで話をするのはやめてくれないだろうか?
左腕に瑠璃、右腕に琥珀が絡みつき、俺の首を絞めようとしている珊瑚がいる。一人、ポジションがおかしいけど、これはいつもの事なのでスルー。
この見事な妹トライアングルに囲まれている俺は幸せものなのかは分からないが、それぞれが俺の身体を掴み、歩幅はバラバラで転びそうになる。
こんなに寄り添って歩く必要は普通ないだろう。隙間なんてないぞ? 冬だから暖かくて丁度いいが、夏にやられるとたまったものじゃない。
まあ、すでにこの光景はこの辺では朝の名物となっとおり、周りを行く連中は俺達を見て羨望と嫉妬の視線を交互に飛ばしてくる。
いい加減、俺も慣れたのだからお前等も慣れろ。そして頑張れ、俺。世間の目は生暖かくて厳しいぞ。
「どう思う? お兄ちゃん」
「ん……確かに早い気がするな。そして、俺が迷惑を被る」
「別にいいでしょ、あたしが早起きしようがそんな事は。ねえ、兄貴?」
「いや、だから俺が迷惑を被ると言っているだろ?」
左から困った顔の瑠璃が、右から不満そうな琥珀が、覗き込むように俺の顔を見上げているが、同じ顔に見られるのは慣れてないヤツは混乱するだろう。
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