動き始めた『運命』

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翌日、私はいつものように学校に向かった。が、いつも以上に体が重く感じていた。 「寝不足かなぁ…」 昨夜はよく眠れていなかった。『城主』のことが気になって仕方なかったからだった。 色々とどんな人物なのか考えていて、結局自分がいつ眠りについたのかも覚えていない。 気ダルそうに携帯を手に歩いていると、後ろから肩を軽く叩かれる。振り返ればよく知った笑顔があった。 「はよ、千雪っ」 「ウス、小春…」 「あ、顔色よくないなぁ。寝不足か?」 私の顔を覗き込みながら言う。相変わらず鋭い…。 深川 小春(みかわ こはる)。高校入学して以来、私の中で唯一親友と呼べる存在の子だ。 始めに話しかけてきたのは小春だった。 「春と雪ってなんかいいね」って話しかけられたことがキッカケ。以来、何をするにも一緒に行動していた。 私と対照的でショートの髪が似合う明るい女の子で、委員会やら部活やらに積極的。 誰からも好かれる性格の持ち主で、私からしてみたらこの子の方が可愛くて絶対にモテる。 なのに私と一緒で恋愛に興味がない。 そんな対照的な性格同士にも関わらず、私と小春はすごく気が合う。 音楽や服の好みもほぼ同じで、お互い話が途切れることはなかった。 私自身、小春と一緒にいることが何より心地好かった。 そんな小春は、私の変化に必ず気付いてくれる。 前髪を少し切ったこともメイクを変えたことも…そして私も小春の変化には敏感だった。 たまに「私達双子なのかもね」って言うくらい、私達には通じるものが多かった。 「なに、千雪でも寝不足なるくらい悩みがあったの?意外だ」 小春は小さく笑った。 私はこの小春の笑い方が好きだ。 「あんのよ、それが」 「私に言えないこと?」 「う~ん……言いにくいかも」 「ん、ならいいや」 小春は絶対に深く詮索はしない。私が話すまで絶対に待ってくれる。 でも…こればかりは話せないなぁ…。 「あんがと小春ぅ~」 歓喜のあまり小春に抱きつく。 小春は、これが私の愛情表現だと知っていたから嫌がるようなことはない。 「はいはい♪でも寝不足危険だぞ~?」 「はぁ~い」 「新しく買ったバンプのCDを録音したMDあげるから、これ聞いて寝なさいな」 「マジっ!?本気嬉しいっ!今月金欠で買うの諦めてたんだよねぇ」 「そうだと思ったのよ」 「アザーす小春さまっ!!有り難く頂戴しまぁす♪」 「ははっ、あいよ」 小春はいつも私の先を考えてくれている。
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