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「……うん」
そう言ってくれた小春に、凄く私は泣きたい気持ちになっていた。
泣くのを堪えて小春を抱き締める。
「ありがとう小春…」
震えているハズのその言葉に、小春は私の背中をポンポンと軽く叩きながら「うん」と明るく返してくれる。
私はゆっくり小春から離れて、少し先へと行って私を待っているモリヤくんの所に走る。
小春は笑顔で手を振ってくれていた。
今小春の顔を見たら絶対に泣く。そう思った私は気持ちを切り替えるために、モリヤくんに話しかける。
「ね、ねぇ和夜は?」
するとすかさず、モリヤくんは怒声を飛ばした。
「和夜『様』だと言うのにっ!!和夜様は日中外に出ることは出来ない。今は自宅にて休んでおいでだ。今からそこに貴様を案内する」
日中外に出られない?どーゆー意味なのだろう……。
確かに和夜と会うのは毎日夜だった。日中外に出られないなんてまるで……。
私はそう思いながら、別のことも考えていた。
初めて行く和夜の部屋…初めて見る和夜のプライベートに胸の高鳴りを押さえられない。
「あ、モリヤくん」
「なんだ?」
「初めて呼んでくれたね、私の名前。覚えてたんだ」
「僕をバカにしてるのかっ!!」
「ううん、すっごく嬉しいの!ありがとう」
そう言って私が笑うと、モリヤくんは顔を少し赤くして視線を反らした。
「チッ、ワケのわからん女だ……」
初めて見せる恥ずかし気な表情に、私はまた少し嬉しくなる。
「モリヤくん、なんで今日は人間なの?」
「和夜様が貴様の迎えに行くようにと…さすがにいつもの姿では怪しまれるからな」
「せっかくカッコいいのにもったいないよ?ずっとそれでいればいいのに」
「バっ、バカ者っ!!このような姿を保つことにも力は使うのだからな!!コウモリでないと夜は偵察出来んだろう!!か、カッコいいなどと言われてもなぁ……」
顔を真っ赤にして口調が早くなる。モリヤくんは自分のことを褒められると照れてしまうらしい…改めて可愛いと思ってしまう。
「な、何ニヤニヤしているッ」
「ふふっ、ごめんごめん」
「まったく…っ。着いたぞ!!ここが和夜様が人間での生活なさる場所だ」
そう言われて目の前の建物に目をやる。
……明らかに家賃が軽く二十万くらいいきそうな高層マンションだ。
「も、モリヤくん…?和夜はこのマンションの何階にいるの?」
「ん?もちろん最上階をワンフロア購入されている」
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