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「こここ、購入!?しかも最上階を!!?」
もういくらかかったのか考えたくない……。
多分それは、私のような一般人の考えを、かなり上回るくらいのお金がかかっているハズだ。少々眩暈を感じる……。
「ここは完全防犯になってる。なのでこのカードキーをここに差し込み、暗証番号を入力しないと自動ドアが開かないのだ」
そう言いながら実演して見せてくれる。すると音もなく自動ドアがスッと開く。
こんなセキュリティ初めて見た…。
呆然と中に進んで行くモリヤくんについて行った。
エレベーターに乗ると、モリヤくんは慣れた手つきで最上階のボタンを押す(ちなみに二十五階)。
エレベーターも音もなく閉まり、殆んど震動や重力を感じることなく昇る。
「ねぇ…モリヤくんもここに住んでるの?」
「当然だ。僕は和夜様の下僕だからな、常にお側にいる」
相変わらず、モリヤくんの声で聞く『下僕』という単語には違和感がある。
「前から思ってたんだけど…なんで和夜の下僕に?」
「和夜様から聞いていなかったのか?」
私が頷くとモリヤくんは切なげな表情になって、壁に背中を預けると腕を組み淡々と話出した。
「僕は……仲間のコウモリ達から嫌われてた」
モリヤくんの言葉に、身体がヒヤリとした。
「え………」
「僕は生まれながらにして言葉が話せた。だからコウモリ達から『異端だ』と言われて…扱いが日に日に酷くなっていった。人間で言うところの、リンチってやつだな」
モリヤくんの話に愕然とする。
私は聞いちゃいけないことを聞いている…そんな気がして胸が痛んだ。
「それは激化していって、僕の両親が死んでしまうと、僕は本当に独りになった。遂には満身創意になって、動くことも飛ぶことも出来なくなった…。意識が薄れていく中で、あの方に…和夜様に会った」
和夜の名前が出た途端、今までのモリヤくんの顔がパッと花が咲いたように笑顔になる。
「和夜様は僕を優しく包んでくれて…そして自らの血を僕にくれた。怪我は綺麗になくなって、ボロボロの羽根も新しくなってまた飛べるようになった…。和夜様は僕の命の恩人だ。どうやって感謝の気持ちを返していいかわからなかったから、僕は和夜様の下僕になる決意をした。僕が死ぬまでずっと……」
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