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「城主って何でも出来るんだね。でも私は……この花好きだな」
その時、背後からモリヤくんが現れた。
「その花は、時に和夜様のためにもなるんだ」
「あ、モリヤくんっ。和夜のためって?」
「この花の香りはストレスを取り除くという効果もあるからな、たまに入浴剤のようなもので使っている」
あれだけ生活感がない部屋にも関わらず入浴剤って……なんか変なところが人間臭いな、と心の中で笑ってみる。
「城主様の城はこの先にある湖の中に建てられているんだ。……どうした?なんで歩かない?」
「いやぁ…だってほら、歩いたら花が潰れちゃうから…せっかく可愛く咲いてるのに」
そう言った瞬間、足元の花がパァァッと光り、眩しくて目を閉じた。
光りが消えたと思って目を開けると、足元からスッと、モリヤくんが指差した方向に一筋の道が出来ていた。
さすがに私もビックリして固まる。
「城主の仕業だな」
和夜がポツリと言った。
「えっとぉ……この道を歩いてくださいと…」
「城主様はこの花をこよなく愛しているからな。お前が花を大切に扱ったから、わざわざ花を踏ませないように道を作ってくださったんだろう」
「何でいつも突然なんだろう…唐突過ぎて分かんない…」
ともかく、せっかく作ってくれた道を無駄にしてはいけないと思い、和夜とモリヤくんの後を道なりに歩いていく。
すると、私が歩いた後の道は元の花畑に戻っていっていた。
しばらく歩くと、モリヤくんの言っていた湖が見えた。
そしてその真ん中に浮かんでいるのは、洋風の巨大なお城だった。
白い壁、赤くとがった屋根…なんだかとってもファンタジーを感じる。
「………もしかしたら私の想像してた『城主』とは全く違うのかな…」
「想像してた通りかも知れないし、違うかも知れない。城主は正しい形を持ってはいないからな」
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