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「えっ?じゃあ性別も歳も関係ないってこと?」
「正確には不老不死だ。俺は何回も城主に会ってはいるが、毎回容姿は違う」
「じゃあどうやって城主だって分かるの?」
その問いに和夜は、暫く考え込んでいる様子を見せる。
が、回答はこれだった。
「どんな姿であろうとも近付かれたら斬りたくなる衝動に刈られる精神的拒絶」
あまりに淡々と言われて、一瞬言葉に迷う。
「…………そんなに城主嫌いなの?」
「あらあらあらあら。酷いわぁ和夜ったら。私のことそんなに嫌いだったなんてぇ」
いきなり空から聞こえてきた女性の声に、体が激しくビクッと跳ねる。
「あなたが夜獣と闘えるのは誰のお陰だと思ってるのかしらぁ~?」
「毎回毎回…他に言うことはないのか」
和夜が深く溜め息をつく。
眉間に寄っている皺の具合で、和夜が不機嫌だと分かった。
「城……主?」
「あなたが森中千雪ね。話は聞いてるわ。蜜月華、愛でてくれてありがとう♪さぁお入りなさい」
その声に合わせてお城から橋が伸びてくる。
そして橋は私の足元まで来て止まった。
ようやく城主に会えるんだ…私は少し怖い気持ちを抑え、橋へと足を進めた。
長い橋を渡りきると、象かキリンでも余裕で入れそうなほど巨大な城門にたどり着いた。
城門はギギギッと軋む音を立てながら内側へと開いていく。
「うわぁ……」
城内には外と同じく蜜月華が咲き乱れ、レンガの壁からも愛らしく花が顔を出していた。
そこはもう城内と言うより、植物園の中のようだった。
私の足元からはまたしても道が生まれ、花を踏まないようにしてくれていた。
「以前来た時より花が多いみたいですね、和夜様」
「あぁ、悪趣味だな」
「そうかなぁ…綺麗だけどな」
私がそう言うと、辺りに咲いていた蜜月華がパァッと光り、更に花が咲き増えた。
「…………私の、せい?」
「いつの間にこんな術を…」
「ずっとよ、ず~っと前から!!あなた達が花を前にそんなことを言ってあげないから見なかっただけなのよ!!」
またしてもどこからか聞こえてくる城主の声。
ふと見ると、目の前の天窓から差し込む光が照らす場所には、白いテーブルと椅子が置かれていた。
甘く薫る蜜月華の香りの中に、ふんわりと微かにテーブルの上に置かれたティーカップに注がれた紅茶の香りがしてくる。
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