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始めは気のせいだって言い聞かしたものは、気のせいではなかった。
二人…三人いる?
「もぅ……ッ!!一体何なのよっ!?」
何だかムカついてきた私は、勢いよく振り返った。
「ひっ………!?」
怒鳴り声の代わりに口から出たのは、引きつった悲鳴。
そこに居たのは人間によく似た、別のものだった。
形は人間なのに、顔はまるで鬼のようで、肌は土色。爪は鋭く伸びている。
「えっ……な、なんかの撮影とか……ナイ、よねぇ?」
あはは、と笑ってみても相手はグルルと何か呻き声をあげる。
同時に口からはドロリと液体が垂れる。
「ちょっ、ちょっとちょっとぉ!!た、確かに退屈だって思ってたわよっ!?だからってこんな急展開は御免だってのっ!!」
「おい、女」
初めて話した人の形をした化け物の声は、酷くダミ声で言葉が聞き取りにくい。
それでもちゃんとした日本語に、なんとなくホッとした。
「喰わせろ」
しかし、次に聞き取れた言葉に私は激しく首を左右に振る。
「いや、結構ですッッ!!てか、そんなこと許せるわけないじゃない!!!!」
「お前から凄く旨そうな匂いする」
「お前を喰えば強くなれる」
「そんな根拠のない強さを欲しないでよっ!!こんな若くして死にたくないっての!!」
そんな私の叫びを無視して、化け物は私へと近付いてくる。
もうダメ――――っ!!!
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