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あの悪夢にしてしまいたい出来事から早一週間。
何故か私は、あの日を境に毎日あの化け物・夜獣に襲われていた。
一週間襲われ続けてわかったことは、あの夜獣は昼間は普通の人間と見分けがつかないということだった。
しかし夜になると本領を発揮し、化け物になってしまう。
実際、私の目の前で変身した夜獣を見たこともあった。
一週間経っても怖いものは怖い…慣れるということもなく、毎回足がすくんで動けない私だったけど、心の中ではわかっていたのだ。
絶対に、あの人が助けてくれるってことを。
「こんなに夜獣が一人の人間に執着するなんて初めてのことだ」
夜獣を灰にした後、刀を鞘に納めながら和夜はそう口にした。
「そんなこと言われても…私は何もしてないし」
始めは無愛想で交わす言葉も少なかったけど、今では普通に会話をしてくれるまでになった。
それがちょっと嬉しかったりもして…。
「毎日これでは俺の身がもたない」
「ごめん……」
「……お前が謝ることではない。裁かれるべきは夜獣だ」
いつも無表情の和夜は、私を名前で呼んでくれたことは一度もない。
それが未だに不満な点だけど、ここまで話してくれるだけヨシとするべきみたい。
「うん…和夜、いつもありがとっ!!」
満面の笑みでそう言うと、呆れた溜め息を吐かれる。
「お前は、よく笑うな」
「いいじゃん別にぃ。感情に乏しい和夜と一緒なんだから、私くらい感情豊かじゃないとって思うんだよね」
「……本当に変わった女だな」
「またそんなこと言う~!なんかそれってバカにされてない?」
「バカにしているつもりはない。褒めてるつもりもないがな」
大体毎日こんな具合いのやり取りをしていた。
そんな他愛ない会話もなんだか楽しく感じる。
「何故お前がそんなに襲われるのか、本当に見当もつかないのか?」
「なぁ~い。だって私はあの日初めて夜獣のこと知ったんだよ?」
そしてあなたのことも知った。それは夜獣に感謝すべきなのかも知れない。
「けれど何かあるんだろうな、あいつらにしかわからない何かが…」
真剣に考え込んでいる和夜をよそに、私は和夜をじっと見つめていた。
その視線に和夜が気付く。
「お前はよくそうやって俺を凝視するな。一体なんだ?」
「ん?綺麗だなぁって思ってるんだよ?」
「………綺麗、だと?」
和夜は目を見開いて驚いた表情を見せる。
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