242人が本棚に入れています
本棚に追加
初めて和夜がハッキリと感情を顔に出した。
「うん。髪なんてめっちゃストレートでサラサラだし、肌だってスッベスベだし、睫毛長いし、それに一番好きなのは…」
私はピッと人指し指を伸ばし、和夜の顔の一点を指した。
「この目だなっ」
それがよほど意外だったようで、和夜は驚愕に見開かれた瞳のまま返した。
「この…目が……?気持ち悪くはないのか?」
「なんでそんなこと言うの?あっ!!もしかして誰かがそんなこと言ったの!?誰よそんなこと言ったの!!ムッカつく!!」
怒りをあらわにすると、和夜は半ば頭を抱えてしまったようだ。
「一体なんなんだ……」
「だって綺麗なもんは綺麗じゃん!!私はキラキラしてるのに目がないのっ!!和夜の目ってすっごい綺麗だよ!?光があたると金色に光ってさ、そんな綺麗な目してる人初めて見たし」
「……言っておくが、これは作り物じゃ…」
「知ってるよ?カラコンじゃ、そこまで綺麗に光んないもん」
「裸眼でこれだと知ってて…?」
「私はこう見えて差別とかって大嫌いなんだよね。イジメとかしたことないんだよ?格好悪いじゃない、そーゆーの。人は見掛けじゃないし、綺麗だと思ったものは綺麗!!他がそれをどう思うか知んないけど、私はそう思ってるからそれでいいの!!」
心底熱弁して、自分なりに満足していた。
その様子を和夜は呆然と見る。
「……やっぱり変わった女だ、お前は」
「いいですよーだ!!ねぇっ、和夜のこともっと教えてねっ!?」
「俺に関わらない方がいい」
威圧的な口調のそれは、何だか諭しているようにも聞こえた。
私はワザとらしく肩を竦めてみせる。
「もう関わっちゃってるじゃん。私が知りたいって言ってるんだから、教えてよ?ねっ」
私が満面に笑みを浮かべると、和夜は諦めたのか呆れたのか、深く溜め息をついた。
肯定もしてないけど否定もしていない。少し希望を持ってもいいらしい。
私は惚れやすいってタチではなかった。
当初でも言ってた通り、別に恋愛になんて興味はなかったわけだ。
でも…和夜には何か惹かれるものがあったらしい。急速に私は和夜に入れ込んだ。
カッコイイとか、簡単な理由じゃなかった。
「何で?」って聞かれたら分からないけど…感覚的な何かだったのだ。
和夜が……人間でないとわかっていても…。
最初のコメントを投稿しよう!