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「だぁぁっ!!うるさい小娘っ!!和夜様から離れんかっ!!」
「そうカリカリしないでよ~。別に和夜はダメって言わないんだからさぁ」
パタパタと懸命に羽を動かしながら怒鳴る姿は、いつ見ても可愛い以外ない。
「和夜様はそーゆーのはどうでもいいって考えてしまう方なんだ!!だから僕がしっかりとだなぁ…」
「モリヤ、夜獣はいたのか」
続く言葉を遮ったのは、心より慕う和夜。ピタリと怒号が途絶えたモリヤくんは、急いで頭を下げる。
「はっ!!申し訳ありませんっ!!えっと…やはりこの女の元に集合してくるようで、他では一切の夜獣を見掛けなくなりました」
「やはりか……お前を見張っていれば楽なわけだが、理由が気掛かりだな」
「それについてなんですが、夜獣がおかしなことを口にしておりました」
私は自分を指差して首を傾げた。
「私のことでしょ?昨日言ってたアレ?」
僅かにつり上げた眉尻で、和夜が私を流し見る。
「お前も聞いていたのか?何故その時に言わない」
「まぁ…特に言うほどのこともないかなって」
「モリヤ、何を聞いた」
「はい、『この女があの…』とか『こいつを喰えば百人を喰ったのと同じ』だと」
モリヤくんの話を聞いて、和夜は顎に手をやって考え込んだ。
「……やはりお前には何かしらの能力があると見ていいらしいな。少なくとも普通の人間ではないらしい」
実感のない本人としては、他人事のような言葉しか出ない。
「ふーん…じゃあ私って何者なんだろ…今まで十七年間普通に生きてきたのにさ」
そんな私とは違い、和夜は真剣な表情で小さく頷く。
「調べる必要があるな。モリヤ、至急『城主』に連絡を取り、近々行くと伝えろ」
「はっ、かしこまりましたっ」
和夜の言葉に、素直な問いが口をついた。
「『ジョウシュ』って?」
「世界を統率する者だ。ありとあらゆる知識を得ていて、何者にも負けない力を持つ。唯一夜獣を斬ることの出来るこの刀を作ったのも城主だ」
「………それって無敵じゃない」
話を聞いて、頬が引きつるのを感じるくらいなのに、和夜はあっさりと、とんでもないことを言う。
「お前を城主の元に連れていく」
「えっ!!?そ、それって私が会って大丈夫なの!?」
「普通の人間が会うのは初めてだろうな。多分三日以内には行くことになるだろう。覚悟はしておけ」
唖然とした私からは、不安満載の嘆きしか出なかった。
「………嘘でしょ…」
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