凍える小品

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 話を聞けば聞くほど、宇田川は大学で一人行動が多いらしく、俺とは真逆の人間だった。  しかし、せっかくの飲み会を宇田川一人と話して終わらすわけにも行かないのでトイレに立ったのをきっかけに、離れた席で騒いでいるやつらや、女子の間などを転々とした。  気がつくと、宇田川の隣には砒白(ひじろ)が座って、女子二人と宇田川の四人で盛り上がっていた。  何人か潰れたものの、アル中になる勢いで飲ませてくるサークルに比べてば穏やかで楽しい飲み会で、自分にとって有意義な飲み会であった。  次のゼミではだいぶ周りと打ち解けることができ、教授から出された課題にも、即興で組まされたグループで円滑にこなせた。たまたま飲みの席でよく話した連中ばかりだったので会話が弾んだのだ。  その中には、宇田川もいた。  他三人が課題とは全く関係のない話をする中、宇田川に話しかけられる。 「犬井って頭が良さそうだよね」 「俺が?」  宇田川は頷く。 「頭がいいって言うのは、砒白みたいなやつのことを言うんだよ」  別グループで話す砒白を見る。  一年の文献講読の授業で席が隣だった時に、ちょっとしたアンケートがあった。この大学に入った理由という欄に彼は 「国立に落ちたから」 と書いていたのだ。  砒白は勉強はできるものの少し当たりが強いところがある。以前、英語の課題をやり忘れて、頭のいい砒白に声をかけると、自分とサークル仲間が言い訳をしている間に、思い切り机を叩いて睨まれたことがある。  まあ、こちらが余計なことをしなければ、砒白も怒りはしない。基本はいいやつでノートを写させてはくれないが、分からないところを聞くとよく教えてくれたし、自分が使っている参考書を貸してくれた。同じ学科の同じ学年の学生なのに、これほどしっかりしているやつと俺の差はなんなんだと嘆きたくなる。 「砒白って、どんな人?」 「なんというか、宇田川とは真逆の人間だよ」  宇田川は首を傾げる。  ゼミ飲みで盛り上がっていたのに、覚えていないのだろうか。終わりに宇田川は潰れていたから、可能性は大いにある。 「なんでだろう。砒白って気になるんだよね。近づきたくなる何かがあるよね」 「止めとけよ。宇田川とはタイプが合わないよ」  宇田川はまた首を傾げた。
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