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その年の十二月最初の週末にも 実家から宅配便で荷物が届けられた ところどころに傷やへこみがあり 少々くたびれたそのミカン箱を それでも宝箱を開けるような気ですぐにほどいた 「なぁんだ… 中身は白菜や椎茸などの野菜ばかりで いつもの様なインスタント食品もなく 何より―― 同梱されていた茶封筒には 期待していた現金ではなく 『この野菜は 親戚の由希さんに届けてください お友達と鍋をするからって聞いているので 忘れないでね と書かれた手紙が入っていた まあいい 明日は土曜だし 由希さんのアパートは電車でふた駅の距離だ どうせ予定もなかったし 散歩がてらに行く事にした それに 何より 彼女は美人だ 感謝され コーヒーの一杯でもご馳走してくれるかもしれない そう思うと かえって楽しみになった
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