鹿威し編

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 鍵が解け、玄関の開く音。それまで無音だった一軒家に、それは響き、つまり詩織は帰宅した。 「ただおかーっと」  説明しよう。この意味不明な言葉の正体は、ただいまとおかえりを同時に言う、なんとも寂しい技法である。機会があったら使ってみるといい。孤独になること間違いなしである。そしてこの少女も、例外ではない。  鞄を放り、ソファーに腰を預け、おもむろに携帯電話を取り出した。
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