序章

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 私には最近、生きる意味と言うものを失い始めた。  生きて何になるのだろう。生きて何の得があるのだろう。自分が生きていて、誰が幸せになるのだろう。  そう思い始めていた。  気が付くと、右手にはカッターナイフ。始めは紙などを切って心を落ち着かせた。だけど、それだけじゃ物足りなくなって、私は遂に自分の腕を切り始めた。  始めは痛かった。でも、慣れていくと、痛みも感じなくなり、逆に快楽を憶え始めていた。  流れる自分の血がとても綺麗で、生暖かくて、自分は生きているんだなと思わされた。でも、だから逆に生きていてどうしたいんだろうと思うようになっていた。  生きる必要って何だろう。人はどうして死ぬのだろう。人はどうして人を殺すのだろう。  色々と疑問が沸き上がる。それを消そう、気にしないで置こうと思っても、気になって仕方が無かった。だから、先生に訊いた事もあった。 「生きる事って何だと思います?」と訊いた。  先生は返答に困っていたようだ。素朴であり、且つ難しい問い掛け。それは自分でも判っているつもりだった。だけど、気になってどうしようもないのだ。  先生は一日置いて返答をくれた。 「生きる事は、人を幸せにする為にあるモノ」だと。私はそれを聞き、また問い掛けた。 「人を幸せにして、自分は幸せなの?」と。すると、それは案外早く返答が来た。 「勿論、幸せだよ。家族にしてみれば、いるだけで幸せだから」と言った。  先生は真面目にそう答えてくれる。だけど先生、先生は本当にそう思ってるんですか?ただの、口先ではないのですか?  私は素直にそれを聞き入れる事が出来なかった。どうしても裏を探ってしまう。これは私自身でも認識している悪い癖だ。
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