12月3日おじさんと初の接触。

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12月3日おじさんと初の接触。

はじめまして。僕はこの建物の中にある学校に勤務する者です。山川昇と申します。 まず、おじさんのお名前をお伺いしてもよろしいですか? ご安心ください。あなたが夜になるとここにやってきて寒さを凌いでいるのに気付いたのは、まだ僕一人です。そうして、僕は今のところそれを誰にも言うつもりがありません。 僕が何故あなたの存在に気付いたのか。それはいつも僕がここでたばこを吸うからです。 数日前に、駐車場の奥の大きなガラスやロッカーなどのがらくたの更に奥に、あなたのマットと布団がひっそりと置かれているのを見つけました。 僕はマットの四隅の地面に小さな印を付けておきました。動かしたらすぐにわかる仕掛けです。これを、先週の水曜日から始めました。三日ともマットは動かされていました。あなたは間違いなく僕たち職員が帰った後、ここにマットと布団を敷いて眠っていますね? おじさんは本当に良い場所を見つけましたね。ここは半地下だから、寝ていても道路から見えないし、風も来ないのですから外に比べれば相当暖かい。おまけに、駐車場用の蛍光灯が付いていて、壁にはスイッチまである。 僕がホームレスだったとしても、ここを選んだと思います。 僕が何故あなたとこうしてコンタクトを取りたがっているのか。実のところ、それは僕にもわかりません。ただ何となく、あなたに人間として興味がある。それだけです。 えんぴつを置いておきますので、よければお返事をください。image=109534943.jpg
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