赤か、青か。

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
私には妙な癖がある。 例えば家で本を読んでいるとしよう。しかし、やらなければならないことがある。―もしテレビの画面に女性が映ったら、本を閉じて別のことをする。もし男性だったら、読書を続ける。そんな決め事をした後テレビをつけ、その通りに事を運ぶ。 くだらないが、自分にとっては重要な"選択法"を作ってしまうのである。 この癖はだいたい小さな選択をするときに現れるが、時には大きな選択もこれで決めてしまうことがある。   今がまさに、その時である。   ここのところ、私は疲れていた。体はもとより、最近では心も何かに蝕まれているようだった。 仕事はそうきつくはない。大学を出てすぐに就職した今の職場は、もうすぐ10年。介護職というと周りからは大変な仕事と思われているが、私はそうは感じていなかった。むしろ仕事内容よりも、周囲の介護にかける情熱を目の当たりにする方が辛かった。私はたいした興味もなく、この道を選んでいた。 私生活もたいした苦労はない。少し前まで一緒に住み、家のことをしてくれていた恋人が出ていってからは、また家事を自分で負担しなければならなくなったが、彼女がいる以前に戻っただけだ。何の問題もない。 しかし、私は無気力だった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!