雅 ―MIYABI―

2/8
前へ
/64ページ
次へ
『来年、大きなプロジェクトがある。 お前を主演とした映画だ。』 どうだいい話だろうとばかりの社長の言葉に、雅は礼儀正しく答る。 『ぜひやらせてもらいます。』 社長が大きくうなづく。 そして満面の笑顔になった。 『お前なら、そう言うと思ってたよ。 そこでだ。その映画は恋愛映画だ。 お前、恋愛経験はあるのか?』 『恋愛経験ですか?』 雅が言葉を濁す。 小さい頃から芸能界という仕事をしていた雅には、恋愛経験などあるわけがない。 女の子との恋愛はタブーとされていた。 そんなことが分かれば、人気が落ちるとばかりに、行動は制約されていたからだ。 『はっきりいってないですね。好きな子ならいたことはありますが、恋愛となると話は別ですからね。』 正直に答えた雅の言葉に、社長が難しい顔になり、言葉をきりだす。 『そうか。 なら、恋愛をしろ! 社長命令だ。 恋愛をしたことのないお前が恋愛映画で、いい演技が、いや主役を演じることなどできるわけがない。 だから、恋愛をしてみろ。ただし、バレたら終わりだ。 よって、お前が選んだ相手をこちらで、付き人もしくはマネージャーとし契約してもらう。 いいな!』 雅は思いもよらない社長の言葉に驚いた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1624人が本棚に入れています
本棚に追加