運命の悪戯

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「おかしくはないわ。でも、お姉さまにはもっとキレイな服が似合うと思うの」 「これで、十分」 「そんなことないわ。私がお姉さまみたいに美人だったら、もっとオシャレするもの」  もったいない、と自分のことのように力を入れるアンジェラを、エレーヌは愛おしそうに優しい笑みでみつめます。 「はい、できた」  そう言って、花の冠をアンジェラの頭に乗せました。  白い花の冠は、アンジェラの愛らしさを一層引き立てます。 「はい、お姉さま」  アンジェラも、せっせと編んだ首飾りをエレーヌの首にかけました。  ですが、エレーヌの美しさを引き立てるほどのものではありません。 「やっぱりダメ! お姉さまはもっとキレイなものをつけるべきだわ」 「同感だな」  突然割って入った男性の声に、2人は驚いて振り返えりました。  そこには、馬に乗った青年がいました。  エレーヌはアンジェラを背中に庇うように、さり気なく移動します。  それを見た青年は、馬から下りて2人に近づきました。 「これはこれは、隣りの国の好色王子。このような田舎に何の御用です?」  エレーヌはにっこり笑って、言いました。 「…ずいぶんな言われようだな」 「そうでしょうか? こんな田舎にも、私と同い年だというのに、すでに泣かした女性は星の数、との噂が届いておりますわ」 「…俺と同い年で、化粧っ気も洒落っ気ないとは、女とは思えんな」  隣国の王子は、エレーヌに対してそう返しました。  それを聞いて、アンジェラが立ち上がりましたが、アンジェラが言葉を発するよりも早く、エレーヌが答えました。 「思っていただかなくて、結構です」  王子をきっぱりと拒絶する態度でした。 「何の御用かは存じませんが、この国の花は皆、純粋で素朴なものばかりです。あなたのその汚らわしい手で悪戯に摘んだりしないで下さいね」  冷たい口調でそう言って、エレーヌはアンジェラを連れて、その場を去りました。 「…相変わらず、可愛げのない女だな」  とりつく島のないエレーヌに、王子は短く舌を打ちました。
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