序章

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夏の木漏れ日がさす部屋に白衣を着た男が机に向かい座っている。 二つのベッドに簡素な医療器具、そして消毒液の匂いから学校の保健室と言う事が分かる。 杜人「よ~し終わったなさてさてビールはと」 白衣を着た男が冷蔵庫に向かう。 ガチャリと音がして冷蔵庫が開くとアイスノンや湿布が入っているそして保健室の冷蔵庫に似合わぬビールが二、三十本と入っている。 女子生徒「あ~先生いけないんだ~職務中にお酒飲んだら教頭先生に怒られるよ~」 ベッドで寝ていた女子生徒がむくっと起き上がり悪い物を見るような目で見ながら言う。 実際に悪いんだが…… 杜人「うるへ~このぐらいの息抜きが無いとやってけねぇっての」 そう言うとビールのフタを開ける。 プシュッといい音がして開く。 女子生徒「ねぇ先生もこの高校だったんだよね?先生の学生時代聞きたいなぁ」 無邪気な顔で聞いてくる。 杜人「俺の高校時代かぁ~うん、話すことなど何もない」 キッパリと言い放つ。 女子生徒「えぇ!?何もないって事はないんじゃない!?」 驚いた表情で問いただす。 杜人「何もないって言ったら何もないの!元気になったんなら教室帰れ!」 ビールを片手に女子生徒を入り口まで追いやる。 女子生徒「あ~んもうちょっと寝かせて~」 ねだってくるが扉の向こうに押し出す。 杜人「保健室は元気な人が来るところじゃありません!」 そう言い放ち扉を閉める。 椅子に座りビールを一口飲む。 杜人「俺の高校時代…か」 切なげな顔で保健室の中を見渡す。 (この保健室も変わらないな…唯一変わったのはあの人が居ないだけ…)
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