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俺は下を向き、そのまま恥ずかしさで顔を上げる事が出来なかった。
無言の俺の様子を見て、女はこう続ける。
「バリ臭いし!一発だけ叩いてやろぉかと思っとったけど、近よりたくないけんやぁめた。」
…結局こいつも殴りに来てたのか。
まぁでも助かったみたいだ。
すると女は持っていたバックの中から携帯を取り出した。
………??
「代わりに写メ撮っちゃあよ。」
…は!?やめてくれ!
マジで!!!
俺は顔を上げ、必死に首を横に振った。
こんな姿撮られては生きていけない。
「やめろやめろ!マジやめろ!!!」
パシャ
……嘘だろ?
「おっ、いいのが撮れたよ。見せんけどねぇ。気が向いたら皆に回しとくけん。」
女のその言葉に、俺の中で何かが壊れた。
怒りが頂点に達し、もう何もわからなくなった。
「……しとけょ…」
「は?なんって?」
「大概しとけよコラァ!!!貴様等全員ボテボテぃしちゃあ!!!あぁ!?よぉっと覚えとけ!こっから出たらいっちゃん最初ぃ貴様んトコ行くけんな!!!」
俺は手錠や鎖を破るかの様に椅子の上で暴れ、女を怒鳴り散らす。自分が何をしているのかも何を言っているのかもわからなかった。
女は狂ったように喚き散らす俺を見て、哀(あわ)れむ様な顔をしている。
「マ~ジキモいね!何で明美こんなキモい男好きやったっちゃろ!いや…なんかバリひいたぁ。ちょっと帰ろぉ…」
そう言うなり女は部屋から出て行った。
そしてまた、黒人が扉に鍵をかけた。
静寂な時が流れる。
部屋には何とも言えない匂いが立ち込め、決して暑くはないこの空間で俺は大汗をかいていた。
……………。
例えようもない虚しさが残る。
そして俺の目からは悔しさで涙が溢れていた。
泣いたのなんて何年ぶりだろう。
ちくしょう………
「ちくしょぉぉぉ!!!」
俺の声が部屋中に響いた。
それでも黒人は、やはり無反応だった。
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