100人の女と1匹の猫

3/44
970人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
  歩いている途中、猫は俺の腕の中で寝ていた。 邪魔くさくて仕方がなかったが、まだ人のいるこの場所で捨てる訳にはいかない。     それから5分ほど歩いた。     よし…ここなら大丈夫だろう。     表の道とは打って変わって、人通りの全く無い路地裏に来た。 まさに表と裏と言った感じだ。   ここは、バブル全盛期にディスコやバーが盛んだった通りなのだが、バブルが弾けると同時にそのほとんどがが閉鎖したという話だ。 まぁよくある話だが。   そして最近になると、少し前まで薬物の密売などに使われていた。 しかしこの場所で1組の密売集団が捕まってからは、地元のヤンチャな奴等がよくたむろしている様だ。   見渡す限りでは人はいない。 俺は連れて来た猫を、ビルとビルの狭い隙間に投げ入れた。 猫は地面に叩きつけられ、弱々しい悲鳴をあげた。     「まぁせいぜい頑張って生きれや」     さ、帰ろう。あ~究極にだりぃ。     しかし、帰ろうと振り返った時だ。 そこには見覚えのある女が立っていた。     「こぉた何やってんの~?」     げっ、何でこいつがいるんだよ。 マジ勘弁してくれって。     「ねぇ何やってんのって!」       「いや…別に何もしよらん」     丁度その時、捨てた猫が俺の足元にすり寄ってきた。     「うわっ!猫やぁん!こぉた猫飼ってんの?」     うぜぇ…     「いや…まぁ、あんま見られたくなったっちゃけど…。ここに捨てられとったけん拾ってやろぉと思って」     出た口八丁。 嘘つきが本当に泥棒の始まりなら、俺は今頃ルパンを超える大泥棒になっているだろう。     「まじ可愛いやん!ってか相変わらずこぉた優しいねぇ」     俺の周りにいる奴は皆、俺の事を優しいと思い込んでいる。 こんな腐りきった人間を。 全く頭の悪い連中ばかりだ。     だが俺のこの下らない妄想ももう時期終わる。 もっともこの時の俺はまだ気付いてはいなかったが…。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!