100人の女と1匹の猫

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    コイツいつの間に…? 忍者かよ。 もしかして最初からいたとか? まぁそんな事はいいか。   あの女はもう帰ったようだな…。 ならこれから俺はこの黒人と2人っきりか。 勘弁してくれ。     「あの…小便したいんすけど」     「………。」     けっ、シカトかよ。 ただの見張りってやつか。 どうせ俺英語わからねぇし、この黒人は放っておこう。   しかし何故あの女で遊んでいた事が今更バレたんだ? かなり前の話だぞ…。   そしてこれから何が始まるのだろうか…。 あの女の言い方では俺を殺しはしないみたいだったが。 まぁ常識的に考えてさすがに殺される訳がない。     ふと、何か音が聞こえる。     コツ…コツ…コツ…     足音のようだ。 だんだん近づいて来ている。 またあの女なのだろうか。 それとも今度は違う誰かか。   俺は黙って鉄格子の方を見ていた。 すると1人の女が鉄格子の前で立ち止まり、こちらを向いた。 あの女とは違う…。     …誰だあいつ?     不思議そうに目を凝らす俺を見て、女は微笑みながら静かに喋りだした。     「久しぶりやね」     ……? 知らねぇぞこんな奴。 もしかして助けに来てくれたのか?     「おっ、おぉ久しぶり。元気そぉやね」     後先考えない知ったかぶりは俺の得意技だ。     「…不様な格好やね。いい気味」     はぁ?なんだぁ!? あの女とグルか?     「は?なんてや貴様!?ってか誰や?」     「…はっ、やっぱ覚えてないったぃ。美香って言ってもわからん?」     美香? …覚えがない。     「で、その美香が俺に何の用や?」     女は溜め息をつき、少し呆れた様な表情で話しだした。     「ウチとこぉた付き合いよったはずよね?なのにこぉた他の女とバリ遊びよぉらしいやん。ウチずっと待っとったっちゃけど!こぉたの事優しいと思っとったけん信じとったけど、全部嘘やったっちゃろ?まじウチの事覚えてないとかありえんし!」     付き合った覚えなどサラサラ無い。 だいたいの女には俺が彼女は作らない事を伝えていたはずだが。     「バカやねぇと?何勘違いしとぉとや?貴様の事やら知らんぜ!」     「なっ…!!」     美香とやら女は驚いた様子で黙り込んだ。 そしてしばらくの沈黙の後、口を開いた。     「……開けて」     声が震えている。 しかし、それよりも俺は[開けて]の意味がわからなかった。  
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