100人の女と1匹の猫

8/44
前へ
/44ページ
次へ
    …開けて? その扉をか? 無理に決まってんだろ動けないんだから。     すると、俺の後ろにいた黒人が突然動きだした。     あぁ、なるほどね…。     黒人は鉄格子の扉の方に歩いて行き、扉を開けた。 どうやらこの黒人は、こういう時の為にいるようだ。 よく考えれば動けない俺の見張りをした所で何も意味はないのだから。   美香とやら女がゆっくりと俺の方に近づいて来る。 そして俺の前に来た所で、俺を見下す様に止まった。     「アンタ調子に乗りすぎやないと?マジ最悪!」     そう言うなり女は俺を殴った。     はぁ!? 何やってんのこいつ! マジ意味わかんねぇ!     女は、目をいっぱいに開かせて驚いている俺の顔を見て、更に俺を殴った。 そしてまた殴る。右の手で殴ると次は左手で殴り、左手の次は右手だ。 俺の顔が左右に振れる。     「いった!貴様なんしよぉとやぁ!!?」     女は聞いていない。 悔しさからか目には少しの涙を浮かべ、何度も何度も俺の顔だけを殴る。 大きめの指輪が俺の頬に刺さり、口の中は何ヵ所も切れて血が出ていた。 それでも女は殴り続けた。 女と言えど、無抵抗な人間を殴り続ければ殺せるぐらいの能力は持っている。     マジ大概にしろって…。こいつ正気かよ。     そして、しばらくして女は殴るのを止めた。 しかし、すぐに今度は平手打ちが俺の顔を往復する。 拳が痛くなったのだろう。   それから1分ぐらい経った頃、ようやく女は完全に止まった。 俺の顔は腫れ上がり、所々指輪での切り傷が目立っていた。 鼻と口からは血を垂れ流し、もう喋る気力も湧かない。   女は息を切らしながら再び俺を見下し、言った。     「いいざま。もうそんまま死んどき。じゃあね」     女の声は震え、泣くのを必死に我慢しているのがわかる。 そして俺の頬にもう一発平手を打った後、女は部屋から出ていった。   その後すぐ、黒人は扉に鍵をかけ再び定位置に戻る。     痛ぇ…。泣きてぇのは俺の方だ。一体なんなんだこれは…。     彼女と名乗る美香という女に訳もわからず殴られ続け、俺はかなり不機嫌だった。 しかしそれよりも疲労の方が大きく、愚痴をこぼす気にもならない。 顔がかなり痛む。 が、この状態じゃ腫れた頬を擦(さす)る事も出来やしない。   頭を項垂(うなだ)れ、とりあえず俺は早くこの監禁が終わる事を願った。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

971人が本棚に入れています
本棚に追加