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『…ふん、
これっぽっちとはな…。』
低く、エコーがかった声が
頭の中に響き渡る。
今、対峙している…
この片眼の武者どくろの声だ。
『…まったく、獣の血が
聞いて呆れおるわ。』
恐れを感じる風貌とは裏腹に、
発せられたその声には慈愛が
滲んでいた。
拍子抜けするほど穏やかな口調に、強ばりきっていた勇者の肉体から一気に力が流れ落ちた。
体重を支えきれず、がっくりと
膝をついて頭を垂れる勇者を
見て、その武者どくろは
やれやれ…
と言った様子で首を振る。
そして勇者の髪を鷲掴みに
すると、半ば強引に顔を
振り上げさせた。
(いっ…‼)
頭皮が悲鳴をあげる。
紅い眼光に魅入られ、再び
体が凍りつく勇者の脳内に
声が響く。
『…お前には決定的に
欠けているものがある。
それは…』
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