あるヒーローへの判決

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男は いつの間にか、薄暗い空の下にいた。辺りを見回すが全く見覚えのない場所だ。 そもそも、さっきまで皆に見守られながら無事に天寿を真っ当したばかりなのだ……。ここがどこだかなど、分かるはずがない。 (しかし、地獄という訳はあるまい) 男は天国に行けるというしっかりとした自信があった。もちろん、なんの根拠もない自信ではなかった。 それは 男の現世での職業、いわゆる 正義の味方 というやつだった事。男は、ただひたすら世界の為に尽くしてきた。たくさんの人に感謝もされた。 ヒーローを引退した後も家族を大事に 老後の楽しみであるサボテンを育てながら平和に過ごしていた。 悪い事は何もしてないむしろ人に喜ばれる事ばかりしてきた。だから地獄に行くまい そう男は考えていた。 同じ場所に立っていても何も起きないのでまっすぐ歩いていく。 しばらく すると大きな川が見えた。 河岸には 大きな鎌を横におき、腕を枕の変わりにしながら寝ている少女が一人いた。その近くには小船が揺れもせず静かに止まっている。 男は少女に声をかける。すると少女は赤い髪を掻きながらゆっくりと起き、男に船へ乗る様にと促した。  船に乗り、少女が船頭に立つと船がゆっくりと進み始める。不思議な事にこがなくてもこの船は進んでいくようだ。
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