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男が目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。
ここは……俺の部屋だ。見知らぬ部屋のはずなのに何故かそうだといいきれる。
まるで自分以外の誰かと混ったような感覚がした。戸をノックする音が聞こえる。
戸を明けて出てきのは一人の見知らぬ女性。最近やっと 婚約までこぎ着けた愛しい彼女だった。自分とは違う者の記憶が自分の中にある。その奇妙な感覚はかなりの不快感だった。
しかし、俺を見るとニコりと微笑んでくれる彼女の笑顔を見ていると、俺は心の底から幸せな気持ちになっていた。
―――ナノニ
どうしてこんな事になってるのだ。
いつの間にか誰も見たくないような醜悪な姿になっていて……もはや身体は言う事を聞かず意思なんか関係なしに嫌でも人を殺し、傷付けていって……
目の前では驚愕に目を大きく開けて倒れている彼女がいる。その目に涙がうっすら溜まっているのが見えた。
なぜこんな事になったのだろう……。
いつの間にか 全身を特殊スーツに包んだ男と対峙している。よく見ればあれはいつの日かの俺ようだ。
なんで俺はこんな事し始めたんだ?あの時の俺は確か……彼女と別れた後誰かに襲われて……やりたくてやっているんじゃない。
……そう言いたかった。
だが声は届かず ただ一方的にやられていく。そして 相手は俺に止めをさすべく必殺の体制に入る。
なんどもしてきたその動き。なぜか今は酷く醜くて怨めしい物に見えた。
目の前に圧倒的な死が見え始める。
最後に、彼女の優しい笑顔が浮んで……そうして、 俺の意識は沈んだ。
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