T本さん

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T本さん、60歳半ば。 初めて会った時は… 普通の服を着てるのに、顔が…役者みたいなドーランが塗ってあった! (この親父、たかが飲み屋に行くのにこんな厚いメイクすんのか?) と驚いていたら…親父は市民劇のメンバーで稽古の帰りだったらしい。 にしても…メイクくらい落として来いや!驚くだろがい! ある日親父は一人で興奮していた。 聞くと…自分は小説を書いてるんだ、と。 なかなかの出来で出版社に送ったら返事が来たらしい。 『小説読ませて頂きました。あなたのセンスに感心しました。何かの時にはこちらから連絡致します』 みたいな封書が来たらしい。 T本親父はそれを自分の都合いいように受け取り、もう小説家気分でいたのだ! 印税を何に使うかとか、初版は何部刷るか、サイン会をしようと、年の割に園児の夢みたいな事を延々語る。 私、『読んでみたいです!』 読ませてもらった。 不倫だのレイプだのが有り、殆どがそのシーン… 何じゃこりゃーーっ!己のエロ願望を書いただけかい! 私は読みたいと言った事を後悔した。 親父が感想を聞かせてもらいがてら小説を取りに来るという日、私は店に出なかった…
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