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「青葉ちゃん、どうしたの」
「いつもは面倒ごとには首突っ込まない質なのにさぁ」
次々においらん達から声がかかる。
「違うただ、わっちはあの兄さんがかわいそうになってしまったんで…」
声を張り上げようと思った瞬間、女将から声がかかった。
「青葉!こちらの方のお相手をしておいで。歳はあんたと一緒だそうだよ、話も合うだろ」
「へぇ…」
のろのろと立ち上がると、まわりからひやかしの声があがる。
「にくいよ、青葉!」
「かわいい兄さんをかわいがっておやりよ」
あっははは…と女たちの声。
私は無視して、客の前に立つ。
「青葉でありんす。今晩はよろしゅうたのんます」
相手は、真直ぐと私の眼を見つめると、
「私こそ、どうぞよろしくお願いいたす」
とぺこりと頭を下げた。
とたんに歓声があがる。
「じゃあ、俺は馴染みのとこへ行くから、朝ここで落ち合おう」
町人風の男は、長い階段を昇っていった。
「さ、こちらへ」
店の男が案内に立つ。
彼の指先が少し震えているのを確認すると、自分がとてもいけないことをしているような、なんだか申し訳のない気持ちになった……
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