青葉【あおば】

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なんだろう、これは… 抱かれなくても、なにも問題はないはずだ。              でも何か、胸の奥がちくりと痛む。              「胸が、苦しくなる…清さんを見てると」 ついに、口を出る、言葉。              「清さんは、わっちに無いものをたくさん持っていなさる」              「私が?」              「あまりにも…違いすぎて…」              あとは言葉にならなくなる…              彼は、少し困った顔をする。 「どうしたんです」              言葉にできなくて、苦しくて…外が見えるように、閉まっている戸を開ける。 すうっと息を吸う。              冷たい空気が胸に入ると、いくらか痛みが無いような気になってくる。              吐く息が白くなって、消えていく。              「…………」 この感情は、なんだろう。              私は、この人に、抱かれたいのだろうか。 抱かれない、と思うとひどく胸が痛い。              上を見上げると、細い月が、光を讃えていた。              「綺麗…」
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